防振ゴム、コイルばね、空気ばねは、機械を弾性的に支え、振動を伝えにくくするための代表的な防振方式です。選定する際は、対策したい振動の周波数と、機械に許容できる揺れを確認します。取付高さや周辺設備との接続、空気供給などの設置条件も考慮する必要があります。
「今の防振ゴムで改善しないから、別の方式へ交換したい」という場合も、まずは振動がどこからどこへ伝わっているかを整理しましょう。この記事では、生産技術・設備保全の担当者に向けて、3方式の違いと比較の進め方を説明します。
1.ばね要素と減衰の役割を分けて考えます
ばね要素は荷重を支え、支持した機械の固有振動数や振動の伝わり方に関わります。一方、減衰は共振時の振幅や揺れの収まりに関わります。ばねを柔らかくして振動を伝えにくくすることだけでなく、機械自体の揺れをどのように抑えるかも合わせて検討することが大切です。
エーエスでは、固有振動数を低くするほど振動低減を図りやすくなる一方、機械が許容できる振幅を確認する必要があるとしています。支持を柔らかくした結果、加工や材料供給に支障が出ないかまで合わせて検討します。
| 方式 | 比較するときの特徴と確認点 |
|---|---|
| 防振ゴム | ゴムの弾性と内部減衰を利用。使用荷重での特性、材質、レベル調整機能を確認する。 |
| コイルばね | 金属ばねで支持。機械の振幅、設置高さを確認する。 |
| 空気ばね | 空気の圧縮性を利用。圧力や高さの調整方法、空気供給、減衰機構を確認する。 |



エーエスの防振装置の例。方式ごとの構造と設置状態を確認できます。
2.防振ゴムは材質と使用荷重に応じた特性を確認します
防振ゴムには、レベル調整を兼ねるものや、ゴムを積層したものなどがあります。エーエスではAF・AD・HSなどを紹介しており、同じゴム方式でも構造や用途が異なります。外観やゴムの硬さだけで適否を判断せず、使用条件に合わせて選定することが重要です。
確認したいのは、各支持点の荷重に対するばね特性、振動の方向、取付条件です。油や水、周囲温度への適合性も材質や保護構造によって異なります。交換時は、現在の型式で発生している不具合を伝えると、既設品との比較を進めやすくなります。
3.コイルばねはダンパーとの組み合わせを確認します
コイルばねは、ばね定数と支持荷重に応じて、必要な固有振動数を検討する方式です。性能だけでなく、機械自体の許容振幅についても確認します。特に、プレス加工など瞬間的に大きな力が加わる機械や、起動・停止時に大きく揺れる機械では、減衰の検討が欠かせません。
エーエスのコイルばね防振には、粘性ダンパーを組み合わせたCSVDと、摩擦ダンパーを組み合わせたCSFDがあります。方式名だけで選ばず、加工時の振幅、揺れの収まり、材料供給装置との位置関係まで含めて比較します。
4.空気ばねは空気供給と高さ調整の条件を確認します
空気ばねは、圧縮空気の弾性を利用して機械を支持し、振動を伝わりにくくする方式です。低い周波数の振動を低減したい場合に有効ですが、機械の質量や必要な振動低減量に応じて選定する必要があります。
自動レベリング機構を組み合わせることで、荷重の変化に応じて空気圧を調整し、機械の高さを一定に保つことができます。導入にあたっては、必要な空気圧や供給空気量、配管経路に加え、空気供給が停止した場合の対応や点検方法も確認します。エーエスでは、これらの条件に合わせて、空気ばね防振装置や浮基礎防振システムをご案内しています。
5.設備の条件をそろえて方式を比較します
比較する際は、同じ支持質量・荷重条件と、同じ対策対象の振動条件で資料を確認します。カタログの代表値だけを比較しても、実際の設備でどの程度の性能差があるかは判断できません。次の項目を整理して、候補ごとに確認しましょう。
固有振動数や振動伝達率の資料を見るときは、どの使用荷重・方向で示された値かも確かめます。回転数が変わる設備では、通常運転だけでなく、起動・停止時に共振域を通る場合の挙動も検討対象です。周波数だけで候補を決めず、必要な低減量と機械の動きを合わせて確認します。
| 比較する項目 | 確認したいこと |
|---|---|
| 振動の条件 | 対策対象の周波数・方向と、防振装置の固有振動数。定常運転と起動・停止時の違い。 |
| 機械の揺れ | 許容できる振幅、揺れの収まり、加工や材料供給への影響。 |
| 荷重と支持 | 付属設備を含む総質量、重心位置、各支持点にかかる荷重。 |
| 設置と運用 | 床・基礎の構造と剛性、高さ制限、空気供給、使用環境、点検。 |
導入費用は本体価格に加え、据付や高さ調整、周辺設備の変更も含めて比較します。空気ばねでは供給設備や配管の要否を確認し、運用時の点検まで見通しておくと、採用後に必要な保守作業を把握しやすくなります。費用と保守の条件は、具体的な構成に合わせて確認してください。
6.匿名事例:HSからコイルばねへの変更で上階の振動を低減
工場1階のプレス機が発生する振動が建屋を介して3階の事務室まで伝わり、執務環境に影響していた事例です。既設のゴム防振(HS)を使用していた条件では、共振による振動の増幅が課題となっていました。
エーエスは現地の振動を測定し、シミュレーションで対策を検討しました。振動に対する居住性の評価も踏まえて、金属ばね式のコイルばね防振装置を提案し、交換後の測定で上階の振動低減を確認しています。交換後の居住性評価では、「非常に気になる」レベルから「あまり気にならない」レベルまで改善しました。
一方、交換後はプレス機自体の振幅が増加しており、周囲へ伝わる振動の低減と、機械が許容できる揺れを合わせて確認する必要があります。この事例からも、固有振動数を低くすることだけで方式を決めず、加工や材料供給への影響まで検討することが大切だと分かります。
効果や機械の振幅は、支持荷重、運転条件、床・建屋の特性によって異なります。同じ方式への交換で、すべての設備に同じ結果が得られるわけではありません。
交換しても改善しない場合は伝搬経路から見直します
エーエスでは、振動源が不明な場合や、既設の防振対策で改善しない場合などに、現地調査や振動測定を行います。測定結果から原因を整理し、適切な対策を検討します。
測定値が揃っていなくても、機械の仕様と配置、いつ・どこで支障が出るかを整理すると、次に確認すべき条件が明確になります。現在の支持方法や設置条件をお知らせいただき、防振方式の選定をご相談ください。



