防振マウントの選定には、支持点ごとの荷重と、対策したい振動の周波数などの情報が参考になります。さらに、重心、揺れる方向、機械の稼働状態、設置条件を確認します。機械の総質量を支持点数で割った値だけでは、防振性能まで判断できません。

この記事では、生産技術・設備保全の担当者が、メーカーへ相談する前に整理したい条件を説明します。製品の方式を先に決めるより、何がどのように振動しているかを整理するところから始めましょう。

1.振動の発生源と、影響を受ける側を整理します

機械が発生する振動を床や周囲へ伝えにくくしたいのか、床から伝わる振動を精密機器へ伝えにくくしたいのか。まず、この違いを確認します。エーエスでは前者を防振、後者を除振として説明しています。

「機械が揺れる」という表現だけでなく、どの機械の運転中に、どこで困っているのかを記録してください。例として、運転中だけ床に振動を感じる、立ち上げ時だけ大きく揺れる、隣の装置の稼働で測定値が不安定になる、といった状況を分けます。

2.総質量から、支持点ごとの荷重を考えます

各マウントが支える荷重を確認するため、機械本体だけでなく、付属品、搭載物、稼働中に載る材料などを整理します。次に支持点の数と位置、重心の偏りを確認します。

単純計算の例:質量600kgの機械を4点で均等に支持できると仮定すると、1点あたりの支持質量は150kgです。荷重として力に換算すると、約1,470Nとなります。kgで示す質量と、Nで示す荷重を混同せず、カタログの単位を確かめてください。

ただし、この計算は均等に荷重が分かれる場合の出発点です。重いモーターが片側にある、材料が移動するといった条件では、各点の荷重が同じとは限らないため、配置と荷重分担を確認します。

上から見た機械の重心が中央にある場合と片側に偏る場合の防振マウントの荷重分担を比較した図
図1 機械の重心位置によって、各防振マウントにかかる荷重が変わります。

3.運転条件と振動の周波数を確認します

防振マウントが荷重を支えられることと、目的の振動を低減できることは別です。効果の検討には、対策したい振動の周波数と、機械を支持した状態での固有振動数の関係を確認します。固有振動数に近い振動を受けると、共振によって揺れが大きくなる場合があります。

回転機械では、回転数を60で割ると、1回転につき1回生じる成分の周波数を求められます。たとえば1,500rpmなら25Hzです。ただし、実際には回転数の倍数の成分や、加工・打撃による振動が問題になることもあります。回転数だけで、対策対象の周波数を確定することはできません。

定常的な振動の検討では、対象周波数に対して十分低い固有振動数を選ぶことが基本です。

回転数が変わる機械は運転範囲を、起動・停止で大きく揺れる機械はその発生条件を伝えます。振動の周波数が分からない場合は、稼働状況を整理し、測定の必要性から相談すると進めやすくなります。

4.防振性能と、機械の揺れやすさの両方を確認します

柔らかい支持は固有振動数を低くする方向に働きますが、機械の変位や揺れ方も考慮が必要です。加工精度、操作性、周辺設備との接続など、機械が動くと支障が出る条件を先に整理しておきましょう。

エーエスでは、防振・除振装置の選定で、固有振動数や振動の伝わり方に関わるばね要素と、共振時の振幅や揺れの収まりに関わるダンパー要素を説明しています。ゴム、コイルばね、空気ばねという方式名だけで性能の優劣を決めず、必要な条件に合わせて検討します。

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5.取付寸法と使用環境まで照合します

製品を絞り込むときは、支持荷重だけでなく、取付寸法、荷重をかけた状態の高さ、レベル調整の範囲、固定方法を確認します。床・基礎の構造や剛性、接続する配管や周辺設備、保守作業への影響も、設置図で確認しておくと相談が具体的になります。

油・水・粉塵、周囲温度などの使用環境も伝えます。既存マウントの交換なら、現在の型式、個数、配置、使用年数、発生している不具合の内容を整理します。外観寸法が似ていても、特性が同じとは限りません。

選定相談に使える条件整理表

項目用意したい情報
対策の目的振動の発生源、影響を受ける場所・設備、改善したい状態
質量と荷重通常時・最大時の質量、支持点ごとの荷重が分かればその値
支持位置と重心支持点数、位置、重い部品の配置、移動する搭載物
稼働条件回転数の範囲、打撃の有無、起動・停止時の挙動
測定情報周波数、振動の方向、測定点、測定時の運転条件
取付・環境寸法、高さ、床、固定、配管、温度・油・水など

周波数や重心が不明でも、まず状況を整理しましょう

未測定の数値を推測で埋める必要はありません。「いつ・どこで・何が困るか」と、機械の仕様や配置から確認を始めます。特に、運転条件が変わる設備や、対策後も揺れが残る設備では、製品交換の前に振動の状態を確認することが大切です。

エーエスでは調査・測定解析から設計、製作、工事、効果確認まで対応する体制を案内しています。設備の仕様、配置、稼働状況をもとに、防振・除振対策をご相談ください。